追憶のナルックス
かつて金沢市を中心に展開されていたスーパーマーケットチェーン「ナルックス」。
一時は富山県へも進出するほど勢いがあったようですが、クスリのアオキホールディングスの子会社となったことで、「ナルックス」ブランドのスーパーは姿を消しました。
しかし、法人としての「ナルックス」は存続しており、生鮮食品分野の強化を急ぐ「クスリのアオキ」の力強い裏方として屋台骨を支えています。刺身やお総菜のラベルに、誇りも高くその名が刻まれているのを、よく見かけます。
最終修正:令和5年6月21日 (2)
のちの「ナルックス」は昭和28年(1953年)、金沢市鳴和町の現在「はくさん信用金庫鳴和支店」になっている場所で八百屋さんとして創業されたのが最初です。
昭和31年(1956年)の住宅地図では「中西商店」、昭和34年(1959年)の地図では「中西食料品店」となっていました。この頃はまだ、街角の“お店”に過ぎないご商売だったのでしょう。
しかし、流通革命に背を押されてのことか、昭和36年(1961年)にスーパーマーケット業へ転じ、“お店”から“企業”へと、躍進の歴史へのはじめのステップを踏むことになります。
昭和38年(1963年)の住宅地図では「鳴和食品センター」と記されていました。
鳴和のスーパーといえばココだけという意気込みを感じられる店名です。
その後、昭和39年(1964年)7月24日に「(株)鳴和フードセンター」として法人化。昭和40年代には2号店、3号店と拡大し、「鳴和」の名を各地に知らしめていきました。
昭和47年(1972年)3月30日の北國新聞朝刊に掲載されている広告によれば、この頃には「城南食品センター」(のちのニュー三久)「百万石ストア」「いがらしストア」「スーパーマルエム」とともに『GMチェーン』に加盟していたようです。
昭和53年(1978年)頃より、社名はそのままでブランド名を「ベターライフナルワ」に変更しているようです。よく省略して、例えば「神谷内のナルワ」のように呼ばれていました。
平成元年(1989年)8月に(株)鳴和フードセンターは現社名の「(株)ナルックス」に社名を変更。これによりスーパーマーケットの店名も「ナルックス」となっています。
あくまで「鳴和」の“ナル”を残すことへのこだわりに、ナルックスを育んだ発祥の地への愛を感じますよね。
かつてはテレビコマーシャルも流しており、石川テレビの「さんまのまんま」放送時等にかかっていました。その頃はかなり勢いがあったのでしょうね。
なお、協業組織としてはCGCジャパンに加盟していました。
地場のスーパーが次々と倒れるなかでも、ナルックスは広範囲に展開したお店を守り続けていましたが、その舞台裏はかなり厳しいものもあったのかも知れません。
令和2年(2020年)6月30日、(株)クスリのアオキホールディングスが(株)ナルックスの株式のうち、89.84%に当たる8万9,840株を取得し、子会社化。
これにより、ナルックス全5店舗はドラッグストア化されました。
ただ、(株)ナルックスはアオキの子会社として存続しており、アオキの鮮魚テナントとしても重用されています。鮮魚の買い付けや品質管理などのノウハウは、生鮮食料品の分野を開拓したいアオキにとり、大きな力になったことでしょう。
発祥のお店です。もとは「鳴和フードセンター」として、鳴和町の国道沿い、現在「はくさん信用金庫鳴和支店」になっている場所にあったようです。
昭和47年(1972年)6月2日、鳴和交差点近くに完成した「城北ショッピングセンター」の中核店舗として移転オープンを果たしています。衣料スーパーとして組んだのは「いとはん」。のちには「北陸ジャスコ」になった名門でした。
ジャスコ撤退後も地域密着のショッピングセンターとして、長い間地域の生活を応援し続けていました。
しかし、アオキ買収後、令和2年(2020年)11月29日を最後に完全閉店……。ナルックスの城とも思えた誇り高き建物はすべて取り壊され、跡地には令和4年(2022年)5月25日「クスリのアオキ鳴和店」がオープンしました。
詳しくは城北ショッピングセンターのページもご覧ください。
昭和43年(1968年)6月22日に2号店舗「内灘店」としてオープンしたのがはじめで、住宅地図では「ニューアカシヤストアー」と記載されていました。
昭和53年(1978年)11月23日、「アカシヤショッピングセンター サンタウン」としてリニューアルオープン。このとき店舗名も「ナルワフードセンターアカシヤ店」から「ベターライフナルワ アカシヤ店」に変わったようです。
サンタウンには衣料部門として福進チェーンの(株)ヤスサキ内灘店を併設。そのほか、次のテナントが入っていたようです。
その後「ナルックス サンタウン店」と改称されています。
平成2年(1990年)の住宅地図によると、この時点のサンタウンのテナントは次のようになっていた様子です。
平成16年(2004年)3月、ヤスサキ内灘店が「ダイソー&ヤスサキ内灘店」に。しかし平成26年(2014年)に同店は閉店し、建物の東側半分は営業を続けながら取り壊され、跡地部分には「ファミリーマート内灘向粟崎店」が建てられました。
平成30年(2018年)11月11日、完全閉店。残された建物もすべて解体され、令和元年(2019年)10月24日、跡地にイオン系のドラッグストア「ウェルシア内灘店」が新築オープンを果たしました。
昭和44年(1969年)6月20日、第3のお店「森山店」としてオープン。山の上バス停近く、石川浄水機販売(株)の角から少し入ったところにあり、2階建ての店舗を構えていたようです。
平成5年(1993年)に閉店となり、解体。跡地はナルックス社員寮「ナルジェンヌ」となっています。
昭和47年(1972年)3月30日の北國新聞朝刊に掲載されている「MROスーパー企画 奥さまお買物作戦」の広告によれば、企画に加盟している鳴和フードセンターの店名は『本店・森山店・内灘店・うめの店』とあります。『うめの店』はまったく謎に包まれており、本当に存在していたのかも含めて、手がかりがありません。
なお、昭和47年(1972年)1月3日の賀正広告では『鳴和本店』『ニューアカシヤストア』『森山店』の3店舗しか記されていませんでした。
なにか手掛かりをご存知の方は、ぜひご教授下さい。
昭和47年(1972年)10月27日、高岡駅前にオープンした「いとはん高岡ショッピングセンター」(のちのジャスコ高岡店)の食品部門を担う「ホクセイフード高岡店」としてオープンしています。
その後、ジャスコが「MSの街」として転換した後もベターライフナルワ高岡店として営業が続けられたようですが、昭和60年(1985年)3月1日に閉店。これにより富山県から撤退となりました。
詳しくはいとはん伝説のページもご覧下さい。
昭和49年(1974年)10月10日、砺波市新富町にてオープンした「いとはん砺波ショッピングセンター」(のちのジャスコ砺波店)の食品部門「ホクセイフード砺波店」として開業。しかし昭和53年(1978年)10月31日に閉店し、その後、食品売り場は北陸ジャスコ直営となりました。
詳しくはいとはん伝説のページもご覧下さい。
昭和59年(1984年)9月20日、神谷内町に「ベターライフナルワかみやち店」としてオープンしています。
店舗前に国道8号線と山側環状を結ぶ都市計画道路が通るという好立地に恵まれていましたが、アオキからの買収が発表されるより以前の令和元年(2019年)11月24日に閉店しました。
跡地には令和2年(2020年)4月23日、「スギ薬局神谷内店」が居抜きオープンしています。アオキにならないうちに閉店してしまったためで、結果的にはレアケースとなりました。
平成2年(1990年)11月、桂町の主要地方道松任宇ノ気線沿いにオープン。「ナルックス」ブランドに改称されたあと最初に開店した店舗です。三角屋根のおしゃれな外観でした。
アオキ買収直後の令和2年(2020年)7月15日に閉店。令和3年(2021年)2月24日、建物はそのままで「クスリのアオキ桂店」として転換されました。
平成7年(1995年)7月6日、金石街道沿いへ進出した店舗です。元トーカマート藤江店(アイゼルショッピングセンター)だった建物の居抜きでオープンしました。
かつら店同様、アオキ買収後の令和2年(2020年)7月15日に閉店し、こちらは老朽化もあってか、建物が取り壊されました。
令和3年(2021年)5月26日、跡地に「クスリのアオキ藤江南店」が新築オープンを果たしています。
昭和60年(1985年)6月18日に国道8号線沿線の福久町で「ベターライフナルワふくひさ店」としてオープンしています。
近くにみずき店がオープンしたこともあり、新店への集約や、また平成12年(2000年)4月21日金沢サティ(現:イオン金沢店)の進出もあってでしょうか、平成14年(2002年)9月29日に閉店しました
跡地は「カルバン金沢店」となっています。
平成11年(1999年)5月26日、新興住宅地として発展するみずき団地入口にオープンした店舗です。
クスリのアオキホールディングスへの買収により各地の旧ナルックス店舗が「クスリのアオキ」へ転換していくなか、このお店は元々「クスリのアオキみずき店」と近接していたことから、どのように落ち着くのかが話題ともなっていたのですが、なんと令和2年(2020年)12月2日、「スーパーのアオキみずき店」という新ブランドとしてリニューアルオープンを果たしました。
平成14年(2002年)11月、松任市布市町にオープンしていました。
平成28年(2016年)9月23日に閉店。建物は解体され、跡地には隣接していた「クスリのアオキ松任布市店」が移転の形で新築オープンしました。想像に過ぎませんが、この頃からアオキとの接点が生まれていたのでしょうか……。それとも偶然ですかね。
平成16年(2004年)6月24日、名鉄北陸急配(株)の跡地にオープン。米丸学校前バス停(57黒田線専用)の近くにあり、ナルックス最後の新規出店、そして最後の店舗でもありました。
令和3年(2021年)1月10日に閉店……。そして令和3年(2021年)5月19日、「クスリのアオキ東力店」として転換されました。
アオキに転換されたとはいえ、近年増えつつある食品スーパー型のアオキとなっており、ナルックス製の惣菜や生鮮食料品が豊富に取り揃えられています。医薬品も販売されているスーパーといって良いでしょう。
:: 鳴和に生まれたナルックス
▲ナルックスのロゴ
:: なるわ店
▲城北ショッピングセンター
:: サンタウン店
靴のマルヤス
エレガント ゴシマ
おもちゃの店ピッコロ
デリカショップ マイコック
ばらずし
百万石うどん
インデアンカレー
焼きたてのパン ブレドール
花のなかみや
下村クリーニング
▲内灘駅にも近かったサンタウン
[1階]
フラワーショップぷっちぃ
シューズショップDONA
(株)ヤスサキ内灘店
ナルックス
ブックスサンタウン
和風手造りおそうざいいろは
ばらずし内灘店
ランチ&ドリンクサンフード
下村クリーニング
くすりの中谷
[2階]
ゲームコーナー
駐車場
▲一部減築された部分の断面
:: もりやま店
:: うめの店
:: 高岡店
:: 砺波店
:: かみやち店
▲ナルックス時代の様子
▲スギ薬局に
:: かつら店
▲クスリのアオキに転換されました
:: ふじえ店
▲ありし日のふじえ店
▲ふじえ店
:: ふくひさ店
:: みずき店
▲スーパーのアオキみずき店になりました
:: まっとう店
:: とうりき店
▲ここもクスリのアオキに変わりました
▲スーパー時代の面影が色濃く残ります
参考文献
「北國新聞縮刷版」各号
「日本スーパーマーケット名鑑」各号(商業界)
「住宅明細図」各地版・各号(刊広社)
「金沢市住宅詳細図」昭和34年号
「金沢市住宅明細地図」昭和31年号(日本地図編集社)