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マルエーめぐりの旅

 大学4年生の頃、マルエーの店舗観察を試みたことがありました。そのときのレポートをいま読むとなかなか興味深いところも感じられましたので、今回の「もりさけショッピ」コンテンツ開始にあわせて一部公開したいと思います。

最終修正:令和5年2月20日 (1)


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 1.「井口店」

 平成17年3月19日、私は鶴来へ向かった。訪れるべき店舗は、私の住む金沢市内にも小立野店や藤江北店をはじめとして多数あるのだが、鶴来はマルエー発祥の地である。原点の地の店舗を、まず見に行きたいと思う。
 西金沢の駅から石川線という電車に揺られ、20分ほど走っただろうか。車窓に続いた住宅地が途切れ、白く冠雪した白山連邦の峰々が田んぼに覆い被さるように見えはじめた。そんな頃合いに、井口という小さな駅がある。この井口に、マルエー「井口店」が出店している。
 電車を降り、西へ10分ほど歩いた。小学校のある住宅地を横切ると田園風景が展開し、視界が広く開ける。そのさきに、「コア」と書かれた大きな看板が見えた。井口店は、この「コア」という総合ショッピングセンターの各店舗である。
 「コア」は白山街道の国道157号線という大通り沿いの立地だが、周囲は手取扇状地独特の茫々とした風景で、どことなくのどかだ。が、新興の住宅があちこちに建て込んでもいる。コアに隣接するバスの停留所名も「日向団地前」で、駅から伸びる道路の舗装も黒々と新しかった。あと10年くらいすれば、辺りはどう変わっているだろうかと思う。
 さっそく店に入り、カゴを手にした婦人に続いて、向かって左側の青果売り場から巡ってみた。
 フルーツ類の特性や栄養分、効用について、カラフルな説明が掲げられているのは眺めているだけでも楽しく、ためになる。青果商品のなかでも、今日はパインアップルに力を入れているようだった。小さくカットされたパインがパック詰めにされて並んでいる。母親に連れられてスーパーへ来て、こうしたフルーツ類をねだったりしていた幼い頃を思い出す。懐かしい。
 青果売り場の続きに、豆腐などの生ものが陳列されている。堅豆腐が並んでいるのには、さすがに白山市という感想を持った。井口店の近くには手取ダム建設の関係で在所ごと移住した鶴来桑島町や深瀬新町がある。白山麓に生活した頃を懐かしんで欲しい、あるいは白山麓の文化を残したい、そういう思いが私にも伝わるようだった。
 精肉、鮮魚の売り場へ廻る。従業員の方々が、大きなガラス張りの窓の内側で、肉をスライスし、あるいは魚をさばいている。肉を切り、秤にかけている。手捌きはプロの職人のそれだった。このようにして、丸のままの肉塊や釣ってきたままの魚が、消費者の手に届けられる商品に加工されているのだなと感心した。
 横手の菓子売り場から、子供のおねだりの声が響く。あらためて店内を見廻してみると、土曜日ということもあってか子供連れの母親、という客層が多いようだった。ちょうど新興住宅地の建ち始めたばかりの地である。幼い子を持つ若い夫婦、という世帯が多いのだろう。菓子の棚を見てみると、小さな子供の好みそうな細かな菓子が多数揃えられており、スナック菓子にしても小袋タイプのものが多いように見受けられた。
 ぐるりと一周し、最後に惣菜・弁当類の売り場である。お惣菜はマルエーが自慢できるもののひとつだ。ちょうどこの日はお彼岸の時期で、おはぎが並んでいる。ラベルには「手造り」とある。素朴な形のひとつひとつに、真心がこもっているようだ。数個セットでパック詰めされたものから、1個入りの可愛らしいものまで数量はきめ細かい。1個入りは小世帯用なのだろう。顧客ひとり一人にあわせた数量設定の工夫が窺えた。
 なにがしかの商品をレジに通してもらい、井口店を後にする。


 2.「鶴来店」

 次に鶴来店へ移動しようと思う。コアから鶴来店のある「つるぎショッピングスクエア・レッツ」までは鶴来ふれあい巡回バスという無料バスが走っており、ちょうどすぐに13時38分発があったので、それに乗った。乗客は3,4名のお婆さんたちだけで少なかったが、みな終点のレッツ前まで乗り通し、車内の全員でそのまま入店することになった。お婆さんたちが井口店ではなく鶴来店を選ぶのには、なにか理由があるのだろうか。
 鶴来店へは、実は以前にも何度か入店したことがある。印象としては、正直に言って、雑然とした一時代むかしのスーパーだな、というものである。何回目かの今日も、それは同じで、まず青果の売り場を歩いてみても、井口店との差が目立った。フルーツに関する栄養情報を書いた紙は同じものが貼り出されているようだったが、同じ箇所に何枚か並べて貼ってあったりして、どうもゴチャゴチャとしている。じっくり眺めようという気にはなりづらいように思った。
 鶴来店の利用者は、やはり年配の人たちが多かった。レジ担当の従業員にもかなり年配の女性がいたりして、お婆さん客と何かとりとめのない話をひとことふたこと交わしている。客も店員も笑顔だ。
 どうも田舎くさく、泥くさい鶴来店だが、しかしそれは若い私の眼でみたものである。地元のお年寄りには、この雰囲気が最も安心して買い物をできる店内環境なのかも知れない。決して洗練されてはいない、けれどもどことなく親しみの持てる雰囲気。これは大手スーパーには決して真似できないものだ。バスのお婆さんたちがコア前で降りず、レッツまで乗ってきた理由がなんとなく分かった。
 鶴来店のもうひとつの特徴として、お酒のコーナーが本格的であることが挙げられると思う。金属製のラックに、瓶入りの洋酒が並んでいる。銘柄も豊富だ。実家がむかし酒屋を営んでいたので、私はその光景に懐かしさを覚える。箱入りの清酒が冷蔵ケースの中に入っているのも、スーパーの酒類売り場としては珍しいのではないだろうか。さすがに全国に名を轟かせる名酒「菊姫」の造り酒屋がある鶴来だと思う。
 空腹を覚えるので、パンを買うことにする。カゴに入れたのは「おつとめ品」である。私は慢性的に金欠なので、よくこの「おつとめ品」を手にする。すぐに食べるから消費期限が近くとも気にならない。が、鶴来店の「おつとめ品」コーナーで気になるのは、商品を入れたケースの高さが妙に低く、屈んで手に取らなければならない点である。屈みこんで品定めをしていると、値引き品であることも手伝って、なにかゴミ箱を漁っているような気分になる。それに、お年寄りなど屈むのが困難な人が多いので、困るのではないだろうか。もっとも年配客の場合は経済的にある程度余裕のある人が多いから、このような商品には意を介さないのかも知れないが。


 3.「土居原店」

 マルエー2店舗を見た翌日、ちょうど小松へ来たので、最近オープンしたばかりの土居原店を訪れてみた。
 小松駅周辺は、以前とは見違えるように綺麗になっている。駅も駅前も、別な街のように変貌していた。マルエーのある通りも、以前は無かった道路だったように思う。4車線で広々としており、まるで富山県の道路のようだ。
 土居原店は、テナントとして入居していた鶴来の2店舗と異なり、マルエー独自の建物である。エントランスをくぐると、さすがに新しい店で綺麗だった。明るすぎない照明が、暖かみのようなものを演出してもいるようにも思える。抑えられた、シックな高級感がある。
 土居原店は売り場の構造が変わっており、入口から壁伝いに左側が直ちに青果売り場となっていた。ならばレジはどこかと見ると、その青果売り場の裏側に、パーティションで仕切られて並んでいる。つまり売り場は「の」の字を左右逆さにしたような構造になっているのだ。ただでさえ広い店舗がさらに広く使われている。
 青果売り場を見てみると、まずバナナの陳列されたケースに目が留まった。なんという凝ったディスプレー方法だろうか。商品の仕切りに本物の丸太が使われており、背後には小さな椰子の木が植わっている。ガーデニングさながらだ。傍らにはバナナのヌイグルミ人形が坐っており、チョコバナナのお菓子も添えて売られているのがユーモラスだった。
 精肉の売り場を歩いてみても、冷蔵ケースにブラックトーンのものが使われており、白系のケースよりも商品が引き立っているように見えた。黒は高級感を引き出す色だ。しかも汚れが目立たない。細かいところに演出が効いている。
 作業場との仕切り窓は引き違いに開くようになっており、大きく開け放たれている。なかから対面販売のように従業員が顔を出し、ひとりひとりに視線を向けてくれる。
 土居原店は店舗面積に余裕があることもあるのだと思うが、陳列方法がとにかく面白かった。消費者の"買いたい"という衝動をあおり、あるいは創り出してくれるかのようだ。たとえばチーズの売り場。冷蔵ケースまるごと1台を使って、チーズばかりを幾種類も陳列してある。陳列というよりも、むしろ世界チーズ博覧会の様相だ。ブルーチーズ、ゴーダチーズなど、世界中のいろいろなチーズがまるで博物館の展示品のように美しく並べられている。大量迫力陳列とは180度異なるゆとりの陳列だ。さりげなくワインが置いてあり、よく見るとそれも商品であったりするのが心憎い。ただ並べるだけでなく、顧客に訴えてくる商品陳列、それを見た思いがした。


 


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