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ルネスかなざわの思い出

 金沢市高柳町にあったヨーロッパ風の温泉リゾート施設「アクアリゾート・ルネスかなざわ」。平成20年(2008年)10月2日をもって閉館となり、現在跡地は「イータウン金沢」(アルビス高柳店など)となっていますが、いまも多くの方々にとって思い出の残る場所だと思います。

 
 ▲ルネスかなざわリーフレットより

最終修正:令和6年4月15日 (2)

 金沢市高柳町にあった遊びと憩いの楽園「アクアリゾート ルネスかなざわ」――。

 ウェイブプール、ストリームプールなど大小の温水プールを屋内外の森林浴庭園に配した「ウォーターガーデン」と、天然温泉を使用した古代ローマ風のヨーロピアンバス・バーニョや人工日光浴のソラリーンなどが楽しめる「スパガーデン」、そして大宴会場・宝生やアクアラウンジなどで"遊食"に舌鼓を打てる「グルメガーデン」に、AVシアターやゲームコーナー、レストラウンジを備えた「アミューズスペース」などから成り立つ、巨大レジャー施設でした。

 一年中泳げるプール。ヨーロッパの貴族のような気分で浸かれる温泉。パーティも、コンパも、一人でリラックスしながら映画鑑賞も。小さな子どもからお年寄りまで、そこには楽しいもの、笑顔になれるものの全てが揃っていたのです。『マジメに休んで、マジメに遊ぶ。これからは、人間復活の時代です』そのキャッチフレーズの通りの楽園が、ここにはありました。

 このルネスは京都府に本社を置いていた高山物産(株)の子会社、「(株)金沢レジャー計画」が管理・運営にあたり、長い間石川県民の憩いの場所として親しまれていました。

 平成20年(2008年)10月2日をもって惜しまれつつ閉館し、跡地は「イータウン金沢」となっていますが、いまも多くの方々にとって思い出の場所となっていることでしょう。

 
 ▲リーフレットより

 ルネスは昭和62年(1987年)12月19日(土)にオープンしています。

 まさにバブル景気まっただなかでのデビューでした。

 北國新聞朝刊の報道によれば、開館前日の12月18日に披露レセプションが行われ、ルネス社長は、
『人間復活をテーマに、天然温泉の恵みを生かした新しいスタイルのリゾート施設を完成させた。社会の成熟化に伴いゆとりのある生活、快適な余暇の過ごし方への関心が高まっており、より豊かなリゾートライフを提供していきたい』
 とあいさつされたそうです。

 「人間復活」……。“企業戦士”“モーレツ社員”という言葉が流行するような時代へのアンチテーゼだったのかも知れません。

 また、当日の北國新聞朝刊には大きな広告が3ページに渡って掲載されていました。

 1ページ目はヨーロピアンバス「バーニョ」(大温水槽)に浸かる2人の外国人の大きな写真。その写真に添えて、次のメッセージが詩情豊かにつづられています。

 新しい冬、初めての体験をお届けします。

 人生は長くなりました。休日も増えてきました。私たちは、いままで以上に、自分で自由になる時間を多く持つようになっていきます。あり余るモノと時間のなかで、じっとしているといつか心まで錆びついてしまいそうです。
 汗がかきたくなったら汗をかいて、泳ぎたくなったら泳いで、そして眠りたくなったら眠る……。日常を離れて心と体を開くことが現代を生きる私たちには、とても大切なことだと思います。
 大きなくつろぎとやすらぎのなかで、新鮮な感動を体験できる空間、積極的に余暇を楽しみたい人のイマジネーションを刺激する“遊び”……。そんな新しいリゾートライフを提案するのが、アクアリゾート「ルネスかなざわ」です。
 水と光と緑と、自然の大きくあたたかい祝福をうけて、こころの祝祭日がいま始まります。

 なんともバブリーで、どことなく退廃的なエッセンスも感じられます。

 そうか、ルネスは冬に生まれたのだな、と思いました。

 金沢の冬。雪深く冷えきった冬の金沢でプールに入れる、そのインパクトは夏に完成するよりも巨大だったでしょう。

 
 ▲パンフレットより

 つぎのページは見開き広告になっていました。

 人間力を充電しましょ。
 水と光と緑と、自然の祝福を存分にあびて。とうとうと湧きでる天然温泉のめぐみをうけて。ヨーロッパの香りゆたかな健康リゾート「ルネスかなざわ」。

 マジメに遊べ。マジメに休め。
 ココロのために大切な時間を、思う存分楽しむことができたら、僕らはもっとおおらかになれるかもしれない。カラダのために必要な休息を、自由にとることを考えたら、僕らはもっと輝いてくるかもしれない。マジメに休んで、マジメに遊ぶ。これからは、人間復活の時代です。

 ここにはレセプションで社長が語っておられたコンセプトに合致する熱いメッセージが添えられていました。

 思えば、それまで日本では大人が「休む」「遊ぶ」ことがどこか後ろめたいことという風潮が強かったのかも知れません。「マジメ」が美徳。「働く」が道徳。しかし、バブル期は大人が「遊ぶ」ということが大っぴらになった時代、猛烈時代のなかで「休む」の高付加価値化に注目が集まり、「マジメに遊ぶ」でも良いのだという、そんな趨勢へと変わっていった時期でもあったのかも知れません。

 金沢駅から車で5分。こんな近くに温泉があるなんて、ちょっと驚きかも知れません。でも、温泉脈が網の目のように流れる金沢では、少しも不思議ではないのです。「ルネスかなざわ」では、とうとうと湧き出る温泉を利用。古代ローマの豪華さにあふれるヨーロピアンバスをはじめ、檜風呂、露天風呂など、いろんな温泉を盛り込みました。各施設すべて男性用、女性用があります。

 ルネスは天然温泉であることも売りのひとつでしたね。そしてその温泉のめぐみを活かして、冬でも楽しめる温水プールが実現したわけです。金沢駅から近いことがアピールされていますが、東インター大通りから入ってすぐの高柳町にありましたので、能登地方や富山県からのアクセスも非常に良好でした。

 広告ではルネスの各施設をひとつひとつ、やはり詩情豊かな文章で紹介されていますので、これも見てみたいと思います。

 洗練されてひときわ豪華。古代ローマ貴族の気分にひたる。
ヨーロピアンバス・バーニョ

 ドーム式の天井、古代ローマの建物をほうふつとさせる円柱……。大浴場・バーニョは、ヨーロッパ感覚たっぷり。全く新しいスタイルの温泉です。

 
 ▲パンフレットより

 大温水槽
 天然温泉をふんだんに使った円形の浴槽です。浴槽の入り口から徐々に深くなってゆくにつれ、気泡を含んだジェット水流が、ふくらはぎや太もも、そして腰部と心地よくマッサージしていきます。浴槽の深さは約1メートル。周囲に設けられたデッキに腰かけながら、ゆっくりと入浴を楽しむ新しいスタイルの温泉で、からだのすみずみまでリラックスします。

 温水槽・冷水槽
 大温水槽の横には、温水槽(バイブラバス)と冷水槽を設けています。浴槽内のノズルから吹き出される細かな気泡とジェット水流が、からだに適度な刺激を与え、ストレスを解消する“バイブラ効果”。サウナや温泉であたたまったからだを引きしめ、心身をリフレッシュする“冷水効果”を自由にお楽しみください。

 檜風呂
 浴室全体に漂うヒノキ独特の清々しい芳香が、身も心もくつろがせてくれます。これは、香りのなかに含まれた、消臭殺菌作用や精神安定効果のある成分を、入浴中にたっぷりと吸収できるからです。もちろん、なめらかな肌ざわり、やさしい木の感触も入浴気分をいっそう盛りあげてくれます。

 浴室屋外庭園
 バーニョに面して屋外庭園を設けました。屋外サウナや冷水プール、ワールプール(温水槽)など、ここでもいろいろな温泉浴とサウナがお楽しみいただけます。とくにワールプール(温水槽)は、温泉地にあるものとは全くちがったイメージの露天風呂、バーニョと同じように、この屋外庭園も古代ローマの貴族が遊んだ庭園をほうふつとさせるつくりです。

 サウナ
 お子様からお年寄りまで、どなたにもサウナの爽快さを楽しんでいただくために、3種のサウナルームを儲けました。お好みにあわせて、あるいは年齢やコンディションにあわせてお楽しみください。

 高温サウナ
 サウナ通の方におすすめしたい電気ストーブ方式の高温サウナです。100度前後の熱いサウナルームで、たっぷり汗を流して冷水へ。爽快感ひときわ、ストレス解消に効果的。積極的な健康づくりにどうぞ。

 低温サウナ
ガス遠赤外線方式のからだに無理のない低温サウナです。電気ストーブ方式の高温サウナが100度前後で発汗するのに比べ、ガス遠赤外線方式だと80度前後で発汗。サウナのあの熱さが我慢できないという方や、小学生のお子様でも楽しめます。父子、あるいは母子でいっしょにお楽しみください。

 スチームサウナ
細かいミスト(霧)状の蒸気によって発汗をうながすサウナです。発汗温度は60度前後。乾式サウナでは息苦しくてたまらない方や、呼吸器系統の弱い方、女性などに最適です。発汗による減量・美容効果のほか、のどなどに潤いを与える効果もあります。

 ソラリーン
 ドイツで生まれ、世界各国でその効能が注目されている「室内日光浴器」です。紫外線と赤外線の組合せによって、太陽に限りなく近い光線を屋内で手軽に得ることができます。短時間に肌を焼くことを目的としたこれまでの日焼け器とちがって、肌をいためることもありません。小麦色の肌をつくるだけでなく、血液循環の促進やビタミンDの形成と骨の強化などの医療効果も、各国の大学で確認されています。

 
 ▲パンフレットより

 まずは温泉ですね。

 「ヨーロピアンバス・バーニョ」。ルネスでは温泉のコーナーは「バーニョ」と呼ばれていたのでしたね。

 「バーニョ」。

 不思議な響きです。

 初めて聞いた語ですし、そしてそれ以来、ほかの場所では一度も出会ったことのない語でした。

 温泉といえば和風の岩風呂、竹筒からとうとうと新しい湯が流れ落ち……というイメージが当たり前のところに、テルマエ・ロマエを先取りしたような古代ローマ帝国の浴場が登場したのでした。

 私が“温泉”というものを生まれて初めて体験したのが、このルネスだったのではないでしょうか。

 バスクリンを入れてあるわけでもないのに、湯は緑いろで、どこか苔のような匂いがして、なめると塩辛い。これが“温泉”というものなのだ、と思いました。

 浴槽の壁には『ルネスの温泉は、地下1300mから湧き出る天然温泉……』というようなメッセージが掲げられていた記憶があります。そのフォントがホラーなどで怖い書体としてよく使われる「古印体」で、なぜこのフォントなのだろうと子ども心に思いました。

 未就学児の頃、母親と母方の祖母に連れて行ってもらったとき、父がいませんので、やむなく女湯のほうに入ったことがありました。最初で最後の女湯は、男湯とはまったくすべて左右反対で、鏡の世界のようでした。

 そしてそこにもやはり、「古印体」の説明板は男湯とは逆の壁に掲げられていたのでした。

 「檜風呂」は小さく仕切られた小部屋のようになっていて、その入口には段差がありました。5歳か6歳ころ、幼かった私はその段差で思いっきり滑って転んだことがあって、そのとき誰かは知らないよその子どもに大笑いされました。

 そのことがトラウマになって、ルネスの檜風呂にはめったに入らなくなったかなぁ。

 あのとき笑った子はどこの誰かも分かりませんが、私と同年代のはず。私に社交性があったら友達になっていたかも知れないなぁと思い出します。

 それから風呂ですので洗い場。広告には触れられていませんが、洗い場は四角形に仕切られた部屋のようになっていて、その三辺にカランが並んでいる構造だったと思います。そして、その中央になぜか銭湯のような装飾の少ない長方形の浴槽があったのが印象的です。「ストリートファイターII」のエドモンド本田のステージが思い浮かびます。

 洗い場にはアメニティとして歯ブラシと髭剃りが大量に積み上げられており、1人何個でも、自由に使うことができました。しかも髭剃りは、「ひげの濃い方」「ひげのうすい方」と2種類がセットされていたのです。

 髭剃りは子どもには無用のものでしたが、歯ブラシは必ず使いましたね。袋をやぶいて、使って、そのまま1度きりで捨てる。なんて贅沢なんだ、バチが当たるんじゃないのか、と思いました、その当時。

 そういえば、ルネスの脱衣所には、黄色いいわゆる「ルネスタオル」が棚に山積みになっていて、自由に何枚でも取っていって使うことができました。ただ、たしか「省エネのため」大量に使わないで下さいというような内容の注意書きは書いてあった記憶がありますが……。そして「省エネ」という言葉もまた、私はルネスで覚えました。

 「浴室屋外庭園」。いわゆる露天風呂ですが、これも日本風の露天風呂ではなく、「屋外庭園」なのがとても尖っていて良いですね。白亜の天蓋がしつらえられたワールプールバスは、ドラクエの天空城を思わせました。

 ルネスに泊まって、大浴場は24時間入ることができましたので、朝5時に起きて、起きたなりで朝風呂に入ったことがあるのですが、冬だったのでしょうか、まだまったくの夜明け前で、ライトアップされたヨーロピアンバスは幻想的で、さながら夢のつづきのようでした。

 未明の闇の黒と、白い支柱。そのコントラストをいまも鮮明に記憶しています。

 「サウナ」。ルネスは風呂にもプールにもサウナが至るところにあって、しかもその種類が豊富で、いまのサウナブームにあれば、さらなる人気が出たに違いないですね。

 山小屋のような外観のサウナ、赤い瓦屋根のあるサウナ、とにかくサウナの種類が多かったです。

 風呂のなかにあるサウナでは、半ズボン状の使い捨てパンツを履いて入ることになっていました。入るつど履いて、出たら脱ぐ。なんどそれをやっても良かったのです。さすがに使用済のものはクリーニングしてリユースしていたのだと思いますが、本当に贅沢でした。

 「ソラリーン」はいわゆる日焼けマシーンですね。『各国の大学で確認されています』と熱く効果をうたっているのが面白い。

 階段を上がって、ロフトのような空間に、デッキチェアが並んでおり、その天井から人工の日光が照射されているというものでした。使ったことはありませんが、ソラリーンのある空間は吹き抜けのようになっていますから、欄干から浴場を見下ろして、つぎはあそこに入ろうとか、そういう眺めも楽しかったですね。

 
 ▲パンフレットより


 水との新しい交流がきょうから始まる
ウォーターガーデン

 水はもう夏だけのものではありません。たとえクリスマスの日でも、お正月でも、一年中いつでも泳ぎたいときに泳ぐ、水と遊ぶ。「ルネスかなざわ」は、屋内外にひろがる森林浴庭園に7つのプールをちりばめました。きょうからは、春夏秋冬、泳ぎたいときが水泳シーズン。水と光と緑をたっぷりと浴びて、カラダのシンまでリラックスしてください。

 温水だから一年中水泳が楽しめる。冬が来たのに熱帯へ先まわり。

 
 ▲パンフレットより

 ウェイブプール
 大きな波、小さな波、4種類の波が浅瀬に向かって打ち寄せるウェイブプール。広さは555u、子供たちだけでなく、波とたわむれたくなるような楽しさです。波に向かって泳ぐ、波に逆らって歩く、波に乗ってボディサーフィンにトライする。楽しみ方は、あなた次第。目を閉じれば、ほらそこはもう南太平洋に浮かぶ小島の波打ちぎわです。

 ダイビングプール
 たっぷりと深い水深2.5メートル。レジャープールではちょっと浅すぎて楽しむことのできない飛び込みが、心ゆくまで楽しめるプールです。本格的な飛び板も設置。スタイルやフォームなんか気にすることはありません。自由に、自分流にダイビングしてください。

 ストリームプール
 「ルネスかなざわ」でもっとも人気を集めそうなのが、このストリームプール。ゆるやかに流れる水が、トップライトから光が降りそそぐドームから屋外庭園へと流れ、再び屋内へと戻ってくる回遊式プールです。一年中一定の温度が保たれている温水プールですから、冬でも大丈夫。真っ白な雪が降り積もった白銀の世界を、流れに乗って遊泳という、初めての体験を、この冬は楽しんでいただけるでしょう。ストリームプールの途中には、流れの急な流水プールもあってちょっとスリリング。金沢ならではのプールとして名物になりそうです。

 シンクロプール
 ダイビングプールと同じ深さの水深2.5メートル。シンクロナイズドスイミングのできるプールです。もちろんふつうに泳いだり、潜ったりして自由にお使いいただけます。水中の壁面には、鑑賞用のビューウインドも設置。プロによるショーやイベントの開催も予定していますから、珍しい水中での演技もご覧いただけます。

 チャイルドプール
 小さなお子様のプール。水深も浅く、子供たちが安心して遊べるよう設計されています。大きなパラソルから水が滝のように流れる水中キノコも設置。小さな歓声が絶えないことでしょう。

 湧水プール
 泉のように底から水が絶え間なく湧き出るプール。ダイビングプールに続いています。湧き出る水にからだをゆだねたり、逆らってみたり、不思議な浮遊体験のできるプールです。

 ガーデンプール・ジュニアプール
 屋外庭園のなかにあります。冬は温水で、悪天候以外は雪景色のなかで遊泳。夏は真水で、陽光を浴びながら水の感触を楽しんでください。

 アクアスライダー
 子供たちや若者の人気を集めているアクアスライダーを3基設けました。スタート台は地上10メートル。ブルーと透明の大きなパイプの中を、やわらかな温水にのってスライディング。曲がりくねったパイプは屋内から屋外へ出て、再び屋内の着水プールへ。約100メートルをいっきに滑り降りるスピード感とスリルを、ぜひ味わってください。日頃使わない筋肉も自然に動かしていますから、遊びというよりスポーツ。誰でも簡単にできるフィットネスというわけです。

 アクアステージ
 ドームのほぼ中央。プールに囲まれるように設けられた水上ステージ。ここでは、さまざまなショーやイベントのほか、来場された方も自由に参加できる楽しいゲームやクイズが催されます。また、土曜日の夜などは、ディスコステージにも早変わり。「ルネスかなざわ」のプールは泳ぐだけでなく、さまざまな楽しみにあふれています。

 ジャグジー・ガーデンサウナ
 プールを楽しむ合い間に、そのまま水着ではいることができるジャグジーとサウナをプールサイドに設けています。ご家族やグループ、あるいはカップルで、ジェット水流のさわやかな刺激とサウナの快汗をお楽しみください。

 水中照明・水中サウンド
 ファンタジックな水中照明と水中サウンドも「ルネスかなざわ」のプールの楽しみのひとつ。水中遊泳しながら、気分は熱帯魚です。

 屋外サウナキャビン・屋外ジャグジー
 サウナを生んだ国フィンランドでは、サウナで思いっきり汗を流し、芯からあたたまったあと、冷たい湖に飛びこんで火照ったからだをさます。そして再びサウナへ。これが本格的なサウナの楽しみ方です。限りなく爽快で、一度体験したらきっと忘れられません。そんなフィンランド流のサウナ入浴を体験できるのが屋外サウナキャビン。水着を着たまま、ご家族やグループ、あるいはカップルでサウナ入浴。十分汗を楽しんだあと、近くにある温水のジャグジーへザブン。ストレスなんか消し飛んでしまいます。

 
 ▲パンフレットより

 外観からも象徴的だったオレンジ色のドームの内外が、ルネスの目玉・全天候型プールとなっていました。“ドーム”というものそれ自体に、この時代においては特別な意味がありました。憧れの「東京ドーム」が完成したのが、ルネスとほぼ同時期の昭和63年(1988年)3月18日。全天候OKの「ドーム」というものは、この当時、新しい時代を象徴するものでした。

 「ウェイブプール」。これは海をイメージした波のあるプールで、ほんとうの海のように大波、小波が断続的に打ち寄せる。浜辺は浅いし、徐々に深くなるのも海と同じ。しかも温泉を利用していますので色もついていて、なめるとほんのり塩味でした。

 「ダイビングプール」は水深2.5mもあるので大人でも足が着かず、子どもには無縁の設備でした 。しかし、たしか一部を仕切って浅くしてある部分があって、ここは人も少なく1人で楽しむのには穴場でした。深い部分との境目にはロープがかけてあり、子ども心にも安全でした。

 「ストリームプール」は流れるプール。「ウェイブプール」の海に対して、こちらは川です。庭園のなかを流れる河川のように、曲がりながら名所をめぐり、そこにはときに橋も架けられています。橋の下をくぐったり、橋の上から泳いでいる人を見下ろしたり。立体的な楽しみ方ができました。

 流れがありますので、泳がずにフワフワとたゆたっているだけでも身体は進んでいきます。

 そしてやがて川はドームの外へ。外へは透明なビニールのビラビラで仕切られており、ここを通過するには、いったん水中にもぐる必要がありました。小さい頃は勇気が要りました。

 雪景色のなかでの遊泳。まさにルネスの革新性を象徴するような、新しい遊びがここにありました。冬のオープンはここ金沢においては狙い通りだったことでしょう。

 
 ▲パンフレットより

 「チャイルドプール」。あまり印象がないのですが、「水中キノコ」で記憶がよみがえりました。あの器具って「水中キノコ」という名前だったのですね。金属製の、開いた傘のようなものの上部から水が出てきて、傘のへりを水の幕のように覆って、そのまま下へと円柱の滝のようにして流れるというもの。

 水は止まったり、ふきでたりを繰り返していた記憶があります。

 水の層に打たれてみると、けっこう勢いが強く、スライムの体内に侵食されたような、不思議な体感でした。

 「アクアスライダー」は建物の外観からも目立っていましたね。パイプがドームの外側で腸のようにうねっている。でも私は幼いころは怖くて無理でした。しかし滑った記憶はあるので、小学校中学年くらいになったらチャレンジできるようになったのでしょうか。

 『日頃使わない筋肉も自然に動かしていますから、遊びというよりスポーツ。誰でも簡単にできるフィットネスというわけです』という、やたらと熱をこめて説き伏せるような書き方が良いですね。

 「ジャグジー」はいわばプールのなかにある温泉です。ここは温水なので、プールの休憩時間中にも入ることができました。祖母はここにばかり浸かっていた記憶があります。

 「ガーデンサウナ」。温泉にもサウナが複数あったのに、プールにもサウナがあって、しかも室内と室外で何ヵ所も。ルネスの経営者の方は、本当にサウナが好きだったのだなと思います。

 
 ▲パンフレットより

 それとここでは書かれていませんが、プールには地下道が通っていて、その地下道の途中に窓があり、プールの内部を横から眺めることができました。まるで人間の水族館のように。これが「シンクロプール」の「鑑賞用のビューウインド」のことなのですかね? 泳いでいる人の足の裏の白さが印象に残っています。プールでふやけると、足の裏はやたら白くなるんですね。

 冬でもプールに入れるというのが凄いと感じましたね。外へのビニールのビラビラを通過するのは、小さい頃は勇気が要りました笑

 週末などの繁忙期には、温泉はもちろんのこと、プールもオールナイト営業の場合がありました。


 こなしきれないほどメニューは盛り沢山。楽しみきれない楽しみがここにある。
アミューズスペース

 プールや温泉を楽しむ合い間のプレイスペースとして、AVシアターからゲームコーナー、エアロビクスコーナーなどのさまざまなくつろぎの空間と2つのショップをご用意しました。デッキチェアに身をあずけてまどろむのもいいし、ゲームに興じるのもまた楽しいもの。楽しみは、ここに来る人の数だけあります。

何もしないですごすのもいい。思う存分、遊ぶのもまたいい。

 
 ▲パンフレットより

 AVシアター
 ビデオプロジェクター(150インチ、サラウンド方式)、16ミリ映写機(ワイド、サラウンド方式)、レーザーディスクの3種類の映像システムが用意されたAVシアター。洋邦の明確・名画をお楽しみください。番組は1週間ごとにチェンジ、ロードショーも企画しています。

 ループデッキ
 プールの吹き抜けに円周状に設けられたデッキ。軽くジョギングしたり、散歩をしたり、プールを眺めたり、自由に楽しんでいただけます。全長180メートル。

 スカイロビー
 プールラウンジ吹き抜けの上、トップライトの下にロビーを設けています。テーブルとリラックスチェアをご用意。ご休息やご歓談にご利用ください。

 エアロビクスコーナー
 2階には、エアロビクスエクササイズやジャズダンスが楽しめるエアロビクスコーナーを設けました。インストラクターによるレッスン(無料)も予定しています。初めての方も、お気軽にご参加ください。

 ゲームコーナー
 最新のコンピュータゲームを約20台設置。お子様ではもちろん、おとなの方もつい夢中に。ご家族おそろいでお楽しみください。

 レストラウンジ
 サウナや温泉をお楽しみいただいたあとは、ゆっくりおくつろぎください。リクライニングシートにふかぶかと身を沈めて、本を読んだり、テレビをみたり、眠ったりのんびりと気ままにおすごしください。スナックコーナーでは、軽いお食事とお飲物をご用意しています。

 サイレントルーム
 簡単に睡眠をとりたいという方のためにご用意した仮眠室です。雑音をシャットアウトし、照明も最少限に押さえていますから、ぐっすりとお休みいただけます。

 マッサージコーナー
 サウナや温泉浴のあとのマッサージは、筋肉をさらにときほぐし、全身の血行を良くして疲れとストレスをきれいに取り去ってくれます。マッサージ料・45分2,800円(サービスドリンク付)

 囲碁・将棋コーナー(男性ルームのみ)
 男性用レストラウンジには、囲碁・将棋コーナーを設けました。ご入浴のあとのひととき、盤を囲んで自慢の腕を競いながらごゆっくりおすごしください。

 チャイルドルーム(女性ルームのみ)
 女性用ラウンジの隣りに、小さなお子様のための遊戯室を設けています。可愛いぬいぐるみやおもちゃなどをそなえた夢のある部屋ですから、子供たちもきっと大喜びです。

 アクアショップ
 スイミングウェアや水をテーマにした遊具、スポーツグッズなどを販売するショップを設けました。お洒落なショッピングをお楽しみください。

 カフェ&ギフト“モンブラン"
 ヨーロッパ直輸入の雑貨や民芸品、オリジナルグッズの販売コーナーとコーヒーショップを併設。ご来場の記念やご進物、お土産にご利用ください。

 「AVシアター」というのは映画を上映していた場所ですね。「北の国から」や「男はつらいよ」などを観た記憶があります。いまのシネコンでも狭めのシアターがありますし、それを思えばこれでわりと本格的な映画館だったと思います。このAVシアターは、のちに改装され、ゲームコーナー「ルネスカジノ」として生まれ変わっています。

 2階の奥、ちょうどエントランスの上にあたる場所が「ルネスカジノ」でした。おこづかいを当時流行のストIIに費やしていました。父や祖母はリクライニングルームで休むのが好きだったのですが、たいくつでたまらないので、何百円かせしめてストIIへはしるのでした。それと、ここは良い香りがするんですよね。アロマの一種か……。

 
 ▲思い出のルネスメダル

 「ループデッキ」。屋内プールの外周を高いところから眺められる通路で、楽しそうなプールを見下ろしながらぐるっと回って、一周することができました。私は新しい「石川県立図書館」(百万石ビブリオバウム)を訪れたとき、真っ先にこれを思い出しました。

 のちに「リゾートロッジ」がオープンしたとき、この「ループデッキ」から渡り廊下を使ってアクセスするようになっていました。「リゾートロッジ」に泊まったこともあるのですが、その行き帰り、屋内プールを見下ろしながら歩く眺めが印象的です。俯瞰の妙というか、山道の道路で下を見下ろしながら走る車窓が好きなのも、このときの楽しかった体験から来ているのかも知れません。

 「スカイロビー」もまた、プールを上から眺められる場所でした。箱庭のように俯瞰する楽しみ。帰りぎわ、ソファーの並べてあるそのスペースから、ガラス越しに低いところにあるプールを眺めるんですよ。まだ楽しそうに遊んでいる親子。あの子はあんなにはしゃいで。しかし、ぼくにとってのルネスは今日はここまで。どこか切ないBGMの流れるなかで、いつまでも名残惜しく、楽しげな様子を俯瞰していました。

 「ゲームコーナー」。2階の奥ですが、当初はゲーム機を約20台設置と広告にある通り小規模なもので、のちのゲームコーナーになるAVシアターの横手にあったようです。この初代ゲームコーナーはその後、カラオケルームに改装されています。

 それと、広告では書かれていませんが、私が個人的に印象深いのは、たしかエントランスに設置してあった記憶のある「キャプテンシステム」です。いまでいう「インターネット」の走りのようなもので、NTTが電話回線を用いて展開していた通信システムだったようですね。

 ファミコン感覚でたくさんの情報にアクセスでき、いつまでも触っていたいと感じました。たしか10分で100円とか、そのような仕組みだったのではないかと記憶しています。アラレちゃんのストーリーを体験できる絵物語のようなページがもっとも印象に残っていいます。ほかにも、金沢の名所を調べたり、いろいろな情報を見ることができたようです。

 あれが私の“ネットサーフィン”というものの原体験でしょう。

 本題に戻って、「レストラウンジ」。リクライニングシートの並ぶ休憩室です。いまのテルメにあるようなフルリクライニングシートと、オットマン。何台かのテレビ。健康ランドによくある設備です。

 ここでの休憩時間は、子どもにとっては退屈のひとことでしたね。

 レストラウンジ内の「スナックコーナー」はバーのようなカウンターがあって、お酒をのむ場所だと思うのですが、私はピーチジュースがお気に入りでした。バーテンさんは子どもが寄り付くのが珍しいのか親切でした。

 いまなら絶対に自動販売機を置いて済ませるのでしょうが、有人のカウンターを設け、ジュースなどの簡単な飲み物もいちいちグラスに注いで提供しているのがなんとも豪華でした。支払いはロッカーキーに付属したバーコードで行い、チェックアウト時に一括精算する仕組みでしたので、保護者の寝ている間に何杯も飲んだりね。あと酒のつまみとして「モロキュウ」を出していたと思うのですが、これをルネスで初めて食べました。

 
 ▲パンフレットより

 「サイレントルーム」は仮眠室ですね。レストラウンジとは別に、真っ暗な寝るだけの場所が用意されていて、ふとんなどもあったような記憶があります。

 「アクアショップ」は入口横にあった売店です。ここで水着なども販売されており、プールを利用する際、水着を持参していない人はここで購入する必要がありました。館内で着用するガウン、タオル類は無料で貸し出されるのですが、水着だけは用意しておく必要があったわけです。父がやや不貞腐れながら海水パンツを求めたということもあった記憶があります。

 
 ▲パンフレットより


 こころも踊る、おなかも踊る。グルメもグルマンも納得する“食”がある。
グルメガーデン

 プールて泳いで、温泉にひたって、サウナで汗を楽しんだあとは、テーブルを囲んでにぎやかな遊食会の始まりです。和洋中華・焼肉・ファーストフーズ……お好きなメニューに舌鼓をうって、食べるほどに、味わうほどに心がまーるくまーるくふくらんでゆきます。

和洋中華・焼肉・ファーストフーズ……楽しい楽しい遊食会をどうぞ。

 1階大宴会場・宝生
 約260名様収容の大広間。和洋中華をはじめ、焼肉などお好きな料理を心ゆくまでお楽しみいただけます。正面のステージではカラオケもOK。特殊サウンドシステムと最新のライティングでまさにスター気分です。ご希望の方には、ステージをビデオ撮影、テープをお持ち帰り(有料)いただけます。

 アクアラウンジ・バーガーハウス
 プールサイドには、軽いお食事やお飲物を召し上がりながら談笑したり、休憩したりしていただけるアクアラウンジとバーガーハウスを設けています。セルフサービススタイルで、ハンバーガーやピラフ、サンドイッチなどのスナック類とジュースやコーヒー、ビールなどのドリンク類をご用意。席数は約300です。

 2階小宴会場(予約制)
 2階には、和風情緒ゆたかなお座敷宴会場を13室ご用意。4名様から52名様までの各種ご宴会、ご会食にお応えいたします。メニューは、本格会席料理をはじめ、鍋もの、お造り、さらに焼肉まで、多彩に取りそろえています。ご家族や親しいお友達、あるいは会社や団体のグループで、お気軽にご利用ください。全室予約制ですから、前日までにお申し込みを。当日のご予約は3時間前まで受付け、限定メニューとなります。

 3階大宴会場・白山(予約制)
 3階には最大400名様までを収容できる大宴会場をご用意しました。多勢の方がお集まりになる忘・新年会をはじめ、各種披露宴や記念パーティなどにご利用ください。本格会席料理、鍋もの、焼肉など、豊富なメニューを取りそろえています。

 スペシャルルーム(予約制)
ヨーロッパ感覚あふれるコリント式の円柱をあしらったスペシャルルームを3階にご用意しました。大きな窓に広がる眺望はまさに素晴らしいのひと言。会議や打ち合せ、ご商談のほか、立食スタイルのパーティにもご利用いただけます。最大30名様まで収容可能です。

 最後に、食べるところですね。

 「1階大宴会場・宝生」。1階の奥にあるレストランですね。プールと温泉入口のある辻から、少しずつゆるやかな下り坂を降りていった奥にありました。畳敷きの大広間でした。ここではやはり焼き肉でしょう。テルメもそうですが、健康ランドにはなぜか焼き肉が似合います。なぜなのでしょうか? 水キムチというものを初めて食べて、美味しかった記憶があります。

 「アクアラウンジ」はプールの一角にあったお店で、プールに流れるBGMと子どもたちの歓声に耳を傾けながら、ハンバーガーや唐揚げなどをつまむという場所。やはりルネスでの食事は、洋風のリゾート地を思わせるアクアラウンジが似合いです。

 父親と父方の祖母との3人で訪れたとき、ここで軽食を取ろうとなったのですが、大正生まれの祖母は「わたしパンたべたいわ」と。父親がトレイに載せて運んできたのはハンバーガーでしたが、祖母にとっては、きっとこういう場所では洋風なものを頼まないと……と意気込み、精一杯のオシャレな食べ物が「パン」だったのだろうなと思います。

 3階にも「大宴会場」「スペシャルルーム」があったのですね。3階はまったく記憶にないです。子どもには無縁の場所だったのでしょう。

 入館料は1日コースと3時間コースに分かれており、当初の価格は次の通りでした。
 ◆大人 1日2,800円 3時間1,800円
 ◆中人 1日1,400円 3時間  900円
 ◆小人 1日  900円 3時間  700円

 なお、そのほか館内での飲食代などはロッカーキーに付属しているバーコードで読み取り、チェックアウト時に一括精算する仕組みです。

 また、ルネスへは金沢駅から無料バスによる送迎も実施されていました。昭和62年(1987年)12月19日のオープン初日より運行が開始されており、スタート時は北陸鉄道(株)貸切営業所が受託していました。

 契約輸送ながら、ルネスのエントランス横に用意されたバス乗り場にはちゃんと北鉄標準仕様のポールも設置されていたものでした。

 当初のダイヤは次のようなものでした。
◆金沢駅前3番のりば発
 8:30〜21:30まで、偶数時間は毎時00・30発、奇数時間は30発

◆ルネスかなざわ発
 8:40〜21:40まで、偶数時間は毎時40分、奇数時間10・40発。帰りは浅電前下車。

 
 ▲当初、無料バスに用いられていたパノラマデッカーのイメージ

 なお、ルネス自体も自家用登録の白ナンバー大型バス(富士3Eボディの3ドア路線車)を保有しており、送迎などに活用していたようです。

 平成元年(1989年)3月15日〜5月31日までの間には、ルネスに隣接した第2駐車場(後年リゾートロッジやサンサーカスになる場所)を利用した特設会場にて「ホワイトタイガー猛獣ショー&木下サーカス」の金沢公演が開催されました。

 目玉であったホワイトタイガーは当時、全世界で72頭しか生息しておらず、その神秘的な美しさから“幻の白い虎”と称され、パンダやコアラよりずっと稀少価値の高い珍獣とされていました。サーカスではこの白い虎を16頭も呼んだということです。

 世界でも72頭……。当時は本当にそうだったのかも知れませんが、本当なのかなと思っていまいます。そのうちの16頭です。もし本当だったのだとすれば、“エコノミックアニマル”とまで囁かれた当時の日本人のカネの威力が痛感されることとなります。

 このほか「チンパンジーのゆかいなショー」「アメリカン空中アクロバットつり輪ショー」など、さまざまな演目が披露されたということです。

 当時5歳だった私も連れて行ってもらったはずなのですが、つり輪を使ったアクロバットショーは記憶があるのですが、ホワイトタイガーはどうにも憶えがありません。失神していたのでしょうか??

 ショーの開催を告知する新聞広告には、NTTのテレホンサービスセンターとタイアップしたという“ホワイトタイガーの声が聴ける電話番号”まで公開されていました。「リカちゃん電話」のようなもので、この番号にかけるとタイガーの鳴き声のするテープが流れる……というものだったのでしょう。番号は0762−24−XXXXと0768−22−XXXXの2回線あり、0768局ということは能登のほうからの電話にも対応できるようにしていたのでしょうね。とにかく、やることがなにかとバブリーです。

 この「木下サーカス」開催に対応し、無料バスは毎週日祝日に開始時間にあわせて10分間隔で増発運行、さらに武蔵ヶ辻(北陸銀行前)への停車も実施されるなど、強化されていました。

 また、北鉄ではルネスとの契約輸送の専用車としていた39-595号車(パノラマデッカー)を青と白に塗り分けられたルネス専用カラーに変身させています。

 ルネス側が塗り替え資金を負担したのかも知れませんが、いずれにせよ、1台のバスを特定の施設専用のカラーに塗り上げるとは、ラッピングバスすらも存在しない時代においてはとてつもない出来事でした。

 
 ▲夢いっぱいだったルネス

 昭和63年(1988年)4月29日には森林浴庭園がオープンしています。

 昭和63年(1988年)6月中旬には北陸鉄道(株)が「ルネスかなざわクーポン」の発売を金沢市内のバス案内所や北鉄観光窓口で開始しています。金沢市内均一区間〜金沢駅間の往復乗車券とルネス入場券(3時間コース)がセットになったもので、価格は大人1,800円、小人700円。これは当時の3時間コース入場料と同額でした。

 平成元年(1989年)10月20日には敷地の西側、第2駐車場(後年、リゾートロッジやサンサーカスになる場所)に「ルネスレーシングサーキット場」がオープンしています。コースの全長は5,515m。同時に「ルネスパターゴルフ」「ポケットバイク」もオープンしています。

 サーキットのコースは下図のようなものだったようです。
 
 ピットもあって、本格的なものだったのですね。

 このサーキット施設はその後、リゾートロッジ開設により閉鎖されました。

 平成2年(1990年)7月21日、旧AVシアターを改装し、新しく「ルネスカジノ」と呼ばれた大きなゲームコーナーが整備され、代わって旧ゲームコーナーは「カラオケコーナー」に。さらに第2駐車場に食と遊の合体庭園「ルネスパーク」が登場。さらにこれは夏季だけかと思いますが、屋上で「ビアガーデン」も開催されています。

 平成3年(1991年)9月8日には「ルネスゴルフ倶楽部」がグランドオープンを果たしています。県道疋田・御経塚線を挟んだ道路向かい側の三角形に近い土地をたくみに生かし、“打ちっぱなし”として開発されました。ネオクラシック調のクラブハウスを備えた大人の社交場としてデビューしています。

 平成6年(1994年)7月20日には敷地西側、旧第2駐車場だった場所に「リゾートロッジ」がオープンしています。宿泊に特化したホテル的な施設で、北國新聞に掲載されていた広告によると、
『ロマンチックなパステルトーンのカラーリング、とんがり屋根……。お部屋にはイタリア製の家具をご用意。人数にあわせて7タイプ(和室・洋室)が選べます』
 とありました。

 宿泊料金は5,000円で、ルネスの入場料金も含まれていたようですから、かなりオトクな価格といえそうです。

 
 ▲リーフレットより

 平成6年(1994年)8月13日には敷地の西側、旧第2駐車場だった土地の奥に残っていた三角形の土地を利用して、ボウリング、カラオケ、ビリヤード、アミューズメントスペースなどを備えた「ルネスサンサーカス」がオープン。ゲームセンター代わりの軽い利用にも対応されるようになります。

 まさに、かつてルネス黎明期のころに「木下サーカス」の熱狂に沸騰した場所が「サンサーカス」になったわけですが、やはり、サーカスの熱気を想起して、こう「サンサーカス」と命名されたのでしょうか??

 平成6年(1994年)12月19日、かがり火の演出が印象的な天然温泉の岩露天風呂「ひ温泉」(「ひ」の文字は火が3つ)がプールゾーンの一番奥に造られました。エリア的にはプール内ですが、風呂なので男女別の施設です。「滝」「せせらぎ」の2種類の浴場があり、週替わりで提供されていました。

 なぜプールゾーンのほうに造られたのかが不明ですが、お孫さんをプールで遊ばせている間、おじいちゃんおばぁちゃんが温泉でゆっくりできるようにということなのでしょうか、それとも単にここの敷地に余裕があったからということなのでしょうか。あるいは、この温泉はリゾートロッジとも渡り廊下で接続されていたようでしたので、ロッジから大浴場への移動が遠すぎるということで、宿泊者には便利なこの位置に整備されたのでしょうか。

 効能は、神経痛・関節痛・うちみ・冷え性・慢性消化器病・慢性皮膚病・疲労回復・やけどなど。飲用の効果は慢性消化器病・慢性便秘としていました。

 
 ▲リーフレットより

 平成8年(1996年)4月28日にはプール棟に「カリビアンレストラン」が開業しています。キャプテンジャック率いるキング・デス号の船上、プール棟を舞台に海賊たちの歌や踊り、ジャックと王子、軍隊との激しい戦闘が繰り広げられるもので、食事をしながらスリル満点のショーを楽しむことができました。同年6月30日まで土日に公演されています。

 平成9年(1997年)10月11日、ルネスに隣接してユナイテッド・シネマ・インターナショナル・ジャパン(株)が「ルネス9シネマ」をオープンさせました。大小9館を備え、総客席数2,459席を擁する石川県内初のシネマコンプレックスの登場でした。

 「ルネス9シネマ」のオープンにあわせ、無料バスは同シネマ前にも停車するようになりました。

 

 
 ▲付帯施設がどんどん拡大しました

 遅くとも平成12年(2000年)3月頃までに、無料バスの金沢駅ののりばが金沢駅西口(3番標識)に変更されています。この時点では北陸鉄道(株)西部営業所が担当し、金沢駅西口〜ルネス間は通常期は6往復のみの運行ながら、大型連休、夏休み、冬休みなどの繁忙期には1時間間隔で11往復が運行されていました。

 平成13年(2001年)3月4日には北陸鉄道(株)の金沢地区分社化により、旧柳橋営業所が独立して「ほくてつバス(株)」が発足。ルネスの送迎バスも同社への委託に変更され、専用車である62-296号車もそのまま移籍しました。

 
 ▲2代目“ルネスバス”

 平成17年(2005年)6月5日、隣接地に「ゴーゴーカレールネスかなざわ店」がオープンしています。同社の金沢工場併設の店舗です。

 平成17年(2005年)12月頃、ルネスの送迎バス専用車が新車に置き換えられています。登場したのは日野中型観光バス(メルファ)の65-007号車で、登場時から伝統のルネスカラーに身を包んでいました。これが最後のルネス専用車となりました。

 
 ▲ルネスリーフレットより

 運命が暗転するのは平成18年(2006年)11月17日のことでした。

 ルネスのオーナー会社だった高山物産(株)が会社更生法の手続きに入ったのです。

 ルネス自体の経営は客入りを見ても決して問題があるとは感じられなかったものですが、どうやら高山物産(株)が兵庫県で手掛けていたゴルフ場開発に関係する莫大な債務が経営を圧迫してしまい、破産してしまったということでした。

 (株)金沢レジャー計画ではルネスの他社への営業譲渡を懸命に模索したようですが、非常に規模が巨大な施設ということもあり、結局引き受け手は現れませんでした。

 平成20年(2008年)10月2日を最後に、ルネスかなざわは閉館……。県民の夢が詰まったアクアリゾートは、幕を下ろしました。

 建物は解体され、更地になり、そしてその広大な敷地はスーパーマーケット「アルビス高柳店」を中心とした「イータウン金沢」として再開発されました。

 いまの「アルビス高柳店」は、あたかもルネスの象徴であったドームを模したような外観になっており、どことなくルネスへのリスペクトも感じられます……。

 アルビスが建っている場所は、ちょうどルネスのメイン駐車場だった場所にあたります。ではルネスの建物はどのあたりにあったのか──。地図で照らし合わせると、アルビスの店舗南側の障がい者用駐車場のあるあたりがエントランスだったようです。そして、しまむら高柳店とその駐車場、お店の正面にあるT字路のあるあたりが波のある「ウェイブプール」。パレード金沢高柳店の前の道路のあたりが「ガーデンプール」。シメノドラッグ高柳店のあるところに大浴場「バーニョ」があったのです。

 もうそこに面影を見つけることは不可能です。

 
 ▲跡地はイータウン金沢となりました

 が、ルネスが残したものは、いくつか現存しています。

 ひとつは映画館で、旧「ルネス9シネマ」は高山物産(株)と資本関係がなかったため、ルネス閉館後は「ユナイテッド・シネマ金沢」と改称し、健在です。

 旧「ルネスゴルフ倶楽部」は新しいオーナーが決まり、「D&Fゴルフ倶楽部」を経て、現在は南日本運輸倉庫(株)傘下の「ゴルフガーデン金沢」として営業されています。

 旧「ルネスサンサーカス」は同じアミューズメント店舗ということで転用が容易だったのか、西原物産(株)へ売却され、パチンコ店「DSGメガワールド」として改装されています。

 「ゴーゴーカレールネスかなざわ店」もまたルネスとの資本関係はなかったため、そのまま営業。こちらはルネスがなくなったあとも店名を変えずに営業を続け、令和2年(2020年)10月25日には「ゴーゴーカレールネスかなざわ直売所」となりましたが、なおも「ルネスかなざわ」という名称を継承し、令和の世に「ルネス」を語り継いでいます。

 「ルネス」といえばこの場所と、通りが良いからでしょうね。

 ゴーゴーカレーの秘密基地・ルネスかなざわ工場で製造された金沢カレーを味わい、ルネスを偲びましょう。


参考文献
 「北國新聞縮刷版」各号


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