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419系トイレ前スペースの個体差の研究
平成22年(2010年)3月のJR全線ダイヤ改正より通勤に使う電車を1本遅らせたのですが、その便に419系(寝台改造車)が使われており、一時期は毎日これに乗っていました。
愛用していた立ち位置はトイレの前のスペース。ここは洗面所を撤去した跡地を立ちスペースとしていて、この電車のなかでは広々としているので気に入っていました。
ただし窓がないので、壁に寄りかかりながら、仕方なくトイレのあたりに眼をやったりしていたのですが、それを毎朝続けていて、トイレ周辺のスペースに、個体差がかなりあることに気付きました。
*419系は平成23年(2011年)3月12日改正で全廃されました。
最終修正:令和4年11月25日 (6R)
419系のトイレは2つ並んで設置されていました。これは寝台改造車だった出自によるものなのですが、そのうち向かって左手のトイレは「業務用」と書かれて閉鎖されています。この閉鎖の仕方については全車一様なのですが、その周辺の手の入れ方に個体差があります。
・ [便所]のプレート
ここがトイレであることを示す大切な(?)表示です。この[便所]のプレートが、2つのトイレの間の中央部分にあるものと、使われている右のトイレ寄りにあるもの、そして表示そのものが撤去されているものの3種類があります。
寝台車時代は2つとものトイレが現役だったわけですから、2つのトイレの間、中央部分に設置されている例がおそらくオリジナルな姿なのではないでしょうか。
なお、[便所]のプレートが撤去されているものについてですが、使用できるトイレのドアには、おそらくここ後年になってから新たにピクトグラムのサインが貼られており、[便所]のサインはなくても問題ありません。「便所」、などというちょっと直截的な表現を忌避して、あえて外したのでしょうか?
なお、プレートは[便所]と書いてあるだけのシンプルなものですが、クハ418-8の場合は、「LAVATORY」と英語表記も入っています。
閉鎖された左のトイレですが、「あき」「使用中」を表示する窓も塞がれています。ただし、車両によって塞ぎ方が2種類存在し、金属の板によって上から完全に覆ってあるタイプが主流ながら、窓部分の内側に壁材と同系の化粧板を貼って塞いであるものも。
また、窓部分の内側に鉄板を入れて塞いであるという相の子仕様の改造法を施した車両(クハ418-8)も存在します。
そもそも閉鎖されている左のトイレの配置が通常と異なり、通常よりもかなり左寄りで、引戸の方向も通常とは逆で、右のトイレと同じ方向に取っ手がついている車両があります。「あき」表示窓の痕跡も、左の隅っこに隠れるようにしてあります。
クハ418-4と6がそれで、筆者もはじめはそれに気付かず、左の「あき」表示窓が完全撤去されている車両があるな……と見ていたのですが、毎朝毎朝同じところに立っているうちに違いに気付きました。無いと思っていた「あき」表示窓も、しっかり左隅にあることを発見したものです。
ネットで調べると、この2両の改造前の車両はかなり初期のグループであったらしく、どうもそのことに起因しているのだろうと思っています。
消火器は2つのトイレの間に設置されているものと、そこにはなく後ろの壁に設置されているものとがあります。設置位置だけでなく、「消火器」の表示も、シールだったり、プレートだったり、シールがやけに上に貼られているのがあったり(クハ419-2。[便所]の表示のすぐ下、「あき」表示より上にある)。これまた個体差が激しく、奥の深い部位といえます。
なお、消火器には「敦運派」としたテプラのシールが貼られています。JR内の派閥の名称か?! と思ったのですが、よくよく考えると、「敦賀運転派出」の略のようですね。派出の「派」というわけです。
寝台車時代は、2つのトイレに向かい合うように、洗面所が設置されていたようです。この洗面所を撤去することで、朝の通勤時に威力を発揮する立ちスペースが生まれているわけですが、この洗面所を完全に撤去せず、上からパネルで覆っている車両があります。クハ418-2、7、8がそれです。
せっかくの立ちスペースが邪魔なトマソンで台無しに……というハズレ車両のようでもありますが、実はこの洗面所跡には微妙に腰掛ることができます。
なおクハ418-8のみ、ここにスチーム暖房の吹きだし口がそのまま残されています。古い車両のトイレのなかでも見かける縦長のものです。他の車両ではすべて撤去されていることから、暖房として機能しているかどうかはあやしいですが。
+ + + + +
それにしてもなぜ、このように個体差が出てきたのでしょうか。筆者ははじめ、改造を施した工場による差かと考えたのですが、1両1両について観察していくに、どうやらそうでもないようです。
推測ですが、改造当初は一律な仕様で改造されたものの、その後の検査時の改修等で、時期によって手を入れられたり入れられなかったりで、少しずつ差が出てきたのではないでしょうか。
このようなことは、トイレ周りの違いにとどまらず、ほかにも探せば面白い研究ができるのかも知れませんが、通勤の無聊の手慰みが、熱中しだしてそれどころではなくてってしまっては本末転倒ですので、まぁ筆者の419系研究はここまでに留めておこうと思います。
・ 全廃直前の車輌ファイル
▼クハ418(先頭形状が角型*いわゆる「食パン電車」)
・ 419系の通勤は苦痛ではありませんでした
この研究に取りかかっていた頃の私は、朝8時台に森本→金沢間で電車通勤をしていました。
この区間においては当時、通勤時間帯はどの列車も満員で、森本から乗って座るということは、もとより不可能でした。それで立つのですが、立つにあたって唯一広く空いているのが419系のトイレ前でした。出入口から近いうえ、広々と立て、壁に寄りかかれば吊革に掴まる必要もなく、コツを掴めばここが一番楽でした。
そうして毎日ここに立っていた結果、私はこうしてトイレ前スペースの差異に気付いたわけです。
ネットでは419系の通勤・通学で苦労したというような声が多く飛び交っていますが、私に関してはあまりそういうことはなかったですね。毎朝快適に利用していました。
他方、七尾線から来る415系は入口が完全に人で塞がれがちで、乗っても掴まるところさえなく、朝8時台に森本から乗ろうとすると、地獄でした。415系は混んでくるとドアの前に滞留するので両開き扉でもあまり意味がなくなります。419系はドアが狭く時間がかかったという意見がありますが、ステップ付きなのもあってドア前に人が溜まらないので、私の経験では乗ろうとしても乗ることのできない415系よりはマシでした。
実際に通勤・通学で利用していたわけではなかった方から、異様にけなされたり、あるいは異様に肩入れされたりと、419系は引退してなお、そういう奇怪な目で見られることになったのは可哀想だなと思います。
通勤で利用していた私としては、人生の懐かしい一ページに残る電車です。
・ 「あき」表示
▲鉄板で上から覆ってある例
・ 閉鎖されたトイレそのものの配置が異なる異端車
▲こちらが多数派の配置
▼通常と配置が異なるクハ418-4のトイレ
・ 消火器
・ 洗面所跡
▲洗面所跡と暖房の残るクハ418-8
車号
[便 所]
プレート消火器
閉鎖トイレの
「あき」表示塞ぎ方洗面所跡
特記事項
1
×なし
両トイレ間
鉄板
×撤去済
右方に洋服掛け用? フックがある
2
×なし
両トイレ間
化粧板
○残存
「消火器」の表示がプレート式。
3
中央
後ろの壁
鉄板
×撤去済
配電盤に「自販機SW」と書いてある。
4
右寄り
後ろの壁
化粧板
×撤去済
◆閉鎖トイレの配置が左寄りで引戸方向が逆。
5
中央
後ろの壁
鉄板
×撤去済
6
×なし
後ろの壁
鉄板
×撤去済
◆閉鎖トイレの配置が左寄りで引戸方向が逆。
7
右寄り
両トイレ間
鉄板
○残存
8
中央
両トイレ間
鉄板(表示窓あり)
○残存
洗面所跡にスチーム残存。「業務用」表示がプレート。
9
中央
後ろの壁
鉄板
×撤去済
▼クハ419(先頭形状が特急型*いわゆる「月光型」)
車号
[便 所]
プレート消火器
閉鎖トイレの
「あき」表示塞ぎ方洗面所跡
特記事項
1
中央
後ろの壁
鉄板
×撤去済
2
中央
両トイレ間
化粧板
×撤去済
配電盤に「自販機SW」。「消火器」表示が高い位置に。
3
4
右寄り
両トイレ間
化粧板
×撤去済
5
×なし
両トイレ間
鉄板
×撤去済
6