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 果実
 〜フルーツ・ガール桃子〜

  第1話 「はじめたい フルーツ・ガール桃子」


 果実の少女ガール桃子のことを書きます。
 奥能登町立図書館に所蔵されている「奥能州霊異叢書」という書物によると、桃子は明治の終わりごろから大正の初年にかけて活躍した人物だそうです。
 泣き砂の浜で知られる剱地というところから、仁岸川ぞいにずいぶんさかのぼった山のなかに、蟹挟というところがあるのをご存知でしょう。
 その蟹挟あたりのうっそうと茂る林のなかには、藩政時代まで、特殊な秘術をきわめた仙人の住む村があったのだそうです。
 蟹狭は、最近までは総持寺祖院で知られる門前町の町域でしたが、いまは輪島市になっています。
 世界に知られる観光都市・輪島に、そのような場所があったこととなると、驚くしかありませんが、それより驚くべきことは、同書においては、門前の剱地の浜から10数kmの沖に離れ島があるということが、ごく当然のような調子で繰り返し語られているのです。
 もちろん現在、そのような島は存在しません。
 少なくとも、手元にある道路地図や住宅地図などにも、いっさい記載はありませんし、グーグルマップの航空写真を見ても、そこには海が紺色の皺のように広がっているだけです。
 こつぜんと浮かぶその島は、当時はその名も「能登鬼ヶ島」とか「能登鬼ノ島」とも呼ばれていたと、前掲の書物には記されていました。
 桃子と蟹挟、そして能登鬼ヶ島と呼ばれた謎の島……。その3つの鍵により、大正、昭和、平成と閉ざされ続けていた物語のドアーが開かれます。それが、いまから私が書く「果実のガール桃子」なのです。


 → 第2話「少女の名は桃子」へ

*この小説は完全なるフィクションです。実在の人物・団体・地名・書籍名とは、なんら関係ありません。

  令和3年(2021年)3月6日 公開 (2)


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